
虫歯治療で使われる補綴物に、見た目が美しく仕上がり金属アレルギーの心配もないセラミックという素材がありますが、原則自由診療のため、費用が高いイメージがあるでしょう。しかし一定の条件を満たすと健康保険適用でも歯の色に近い白い詰め物・被せ物が選択できる場合があります。
この記事では、保険診療で利用することができる白い素材で製作する『CAD/CAM』のメリットやデメリット・保険適用条件・他に選択できる白い素材などを紹介します。白い素材を選ぶ際に考えたいポイントも紹介するため、検討の参考にしてください。
保険適用できるハイブリッドセラミックとは

虫歯治療で詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)を選ぶ際、できるだけ自然に見える白い素材を選びたいと思う人は多いでしょう。まずは、保険適用できる白い素材『ハイブリッドセラミック』や『CAD/CAM(キャドキャム)』について紹介します。
ハイブリッドセラミックとは
ハイブリッドセラミックとは、保険診療の素材であるレジン(歯科用プラスチック)と、自由診療の素材であるセラミックの混合素材です。ハイブリッドセラミックでの治療は基本的には自由診療です。しかし金属の価格高騰や金属アレルギーの問題から、白い被せ物の保険適用範囲が徐々に拡大され、現時点ではハイブリッドセラミックによる治療が条件付きで保険適用となりました。
CAD/CAMとは
『CAD/CAM(キャドキャム)』とは、コンピューターを用いて設計や生産を行う技術のことです。CAD/CAMによって、型取りや治療時間においての患者さんの負担を軽減した治療が可能になりました。ガムのような印象材を口に入れて型取りし、それを元に石膏模型を作り歯科技工士に預け、歯科技工士はそれを元に補綴物を作る方法は、出来上がるまでに1週間程度かかります。
一方CAD/CAMの場合、口腔内スキャナーと呼ばれる小型カメラで口腔内を撮影し、データを元にコンピューターが設計、3Dプリンターで削り出す製作方法で、所要時間はおよそ1〜2時間程度です。削り出しはブロックの形の素材から行われます。このブロックが、保険適用できる白い詰め物『ハイブリッドセラミック』です。
ハイブリッドセラミックを使って、CAD/CAMシステムで製作したクラウンを『CAD/CAM冠』、インレーを『CAD/CAMインレー』といいます。この『CAD/CAM冠』『CAD/CAMインレー』は、ある一定の条件をクリアすることで保険適用となります。
CAD/CAM冠・CAD/CAMインレーのメリット
CAD/CAMでのクラウンやインレーは、保険診療以外にも以下のようなメリットがあります。
- 金属アレルギーの心配がない
- 天然の歯に近い硬さで、噛み合わせの歯に負担がかからない
- 何色かある中から近い色が選べる
- 型取りや製作の精度が高いため隙間が生じにくい
保険診療の銀歯に比べると隙間が生じにくく、二次虫歯の発生リスクは低めに抑えられます。
CAD/CAM冠・インレーのデメリット
保険診療で白い歯が実現できるCAD/CAM冠・CAD/CAMインレーですが、以下のようなデメリットもあります。
- 透明感がないため、天然歯の再現は難しい
- 経年劣化・変色がある
- 銀歯に比べると強度が劣るため、歯ぎしり・食いしばりで欠ける可能性がある
- 表面が劣化しやすい・傷つきやすいためプラークが付きやすい
- 変形しやすいため、被せ物が外れるケースがある
銀歯と比べれば見た目のメリットはありますが、自由診療のセラミック素材と比較すると多くの面で劣ります。
オールセラミックとの違い
ハイブリッドセラミックのCAD/CAM冠・CAD/CAMインレーとオールセラミックの違いは、外見の美しさはもちろんですが、オールセラミックの優れている点を考えると見えてきます。オールセラミックの優れている点は以下です。
- 審美性の高さ……透明感があり、色数が多い
- 白さが長持ち……着色・変色しにくい
- 生体親和性の高さ……歯茎との適合性が高く炎症を起こしにくい
- 二次虫歯になりにくい……変形しにくく隙間ができにくい。ツルツルしていて歯垢が付きにくい
補綴物には装着後に温度変化や水分の吸収による膨張・収縮を繰り返すことで自身の歯との間に隙間ができ、虫歯菌が入り込んで二次虫歯を引き起こすものがあります。また、表面にプラークが付きやすく落としにくいことも、虫歯や歯周病の原因となります。
オールセラミックはプラスチックを含まず100%セラミックでできた素材であるため、変色・変形が起こりにくく、見た目はもちろん、歯の健康面を考えても優れた素材です。
ハイブリッドセラミックの健康保険適用条件

ハイブリッドセラミックを使ったCAD/CAM冠・CAD/CAMインレーは、一定条件をクリアすると健康保険の適用が受けられます。CAD/CAM冠・CAD/CAMインレーが保険適用される条件について紹介します。
適用できる歯
CAD/CAM冠・CAD/CAMインレーに健康保険を適用するにあたり、治療する歯の反対側や同じ側に、きちんと噛み合わせる他の歯があるかどうかが適用条件として挙げられます。加えて、以下のどちらかの条件を満たす必要があります。
- 治療の対象になる歯と左右同じ側に、上下に噛み合う大臼歯があり(ブリッジ含む)、治療の対象となる歯に負荷がかかり過ぎない
- 治療の対象になる歯と左右同じ側に、上下に噛み合う大臼歯がないか、または義歯の場合、手前隣の歯が噛み合う(ブリッジ含む)
以上を踏まえて、CAD/CAM冠・CAD/CAMインレーで保険適用できる歯を紹介します。条件が複雑であるため、詳細についてはクリニックに問い合わせてみましょう。
CAD/CAM冠
CAD/CAM冠の保険適用対象の歯は以下です。必須条件を満たせば、前歯と小臼歯の冠が誰でも保険適用対象になります。
- 必須条件
- CAD/CAM冠の治療をする歯の反対側で、上下に噛み合う歯があること
- 適用対象の歯
-
無条件
- 前歯(中切歯、側切歯、犬歯)
- 小臼歯(4番目、5番目)
-
条件付き
- 金属アレルギーの患者さんの大臼歯(6番目、7番目)※要診断書
- 金属アレルギーでない患者さん:上下両側7番がすべて残存し、過度な咬合圧がかからない場合において下顎6番目
CAD/CAMインレー
CAD/CAMインレーの保険適用対象の歯は以下です。必須条件を満たせば、小臼歯のインレーが保険適用対象の歯になります。
- 必須条件
- 小臼歯および大臼歯の隣接面を含む複雑窩洞に限られる
- 適用対象の歯
-
無条件
- 小臼歯(4番目、5番目)
-
条件付き
- 7番目の歯が上下左右4本残っていれば大臼歯(6番目)
- 金属アレルギーの患者さんの大臼歯(6番目、7番目)※要診断書
複雑窩洞とは、虫歯治療のために削った穴が歯の複数面にあることを指します。例えば上の面にしか穴がなければ単純窩洞であるため、2面以上に穴があることが必須条件です。
歯科医院側の基準
CAD/CAM冠・CAD/CAMインレーの治療は、全てのクリニックで保険適用となるわけではありません。厚生労働省が定める基準を満たしたクリニックでのみ保険が適用されます。以下は、保険適用となるクリニックの基準です。
- 厚生労働省に施設基準の届け出を行い、認可された歯科医院である
- 歯科補綴治療に関する専門知識、及び3年以上の経験を持つ歯科医師が在籍している
- 厚生労働省の定める歯科用CAD/CAM装置で製作する
- 製作する歯科医技工所との連携がとれている
今はCAD/CAM冠・CAD/CAMインレーの治療を行っているクリニックが増えているため、検討している人・相談したい人はまず問い合わせしてみましょう。
ハイブリッドセラミックの保険適用の費用
保険が適用された場合の費用は、CAD/CAM冠は1万円以内、CAD/CAMインレーは5千円以内程度です。なお、自由診療で治療を受ける場合はクリニックごとで設定金額が変わります。自由診療の場合は、CAD/CAM冠は4万〜8万円、CAD/CAMインレーは3万〜4万円程度が相場です。
虫歯治療で使用される白い素材

虫歯治療で使用される白い素材は、ハイブリッドセラミックの他にも選択肢があります。
コンポジットレジン
コンポジットレジンは保険診療の治療で幅広く使われる歯科用プラスチックです。主にインレーに使用されます。特徴は次の通りです。
- 歯に似た色をしている
- 治療時間が短く済み、歯を削る量も少ない
- 修復が比較的簡単
- 経年で変色する
- 噛み合わせが強いと欠ける(周囲の歯を傷つけない)
初期虫歯によく用いられる素材ですが、表面がわずかに凸凹していて、経年劣化でざらついてくるため、歯垢の付着を防ぐようケアすると良いでしょう。
硬質レジン
硬質レジンは保険診療で治療できる素材で、コンポジットレジンと同じ歯科用プラスチックですが、主にクラウンとして使われます。特徴は次の通りです。
- 歯に似た色をしている
- 強度は強くないため割れやすく、すり減りやすい
- 汚れやプラークも付きやすい
- 経年で変色する
硬質レジンの保険適用範囲は前歯・犬歯のみ、医師の判断で小臼歯までとなっており、奥歯の場合は適用外です。
オールセラミック
オールセラミックは上でも紹介した通り自由診療の治療で、ファインセラミックスと呼ばれる、しなやかさと強度を高めた陶器の素材です。特徴は次の通りです。
- 透明感があり選べる色も多いため患者さんの天然歯に合わせた色を再現しやすい
- 強度の高い種類もある
- 生体親和性が高い
- 隙間が生じにくく表面が滑らかなため、二次虫歯になりにくい
- 変色しにくい
そもそもセラミックは使用上のすり減りや小さな傷などの損耗はあっても経年劣化がしにくいため、手入れ次第で長持ちする傾向があります。
虫歯治療で白い素材を選ぶポイント

虫歯治療で白い素材を選ぶ際は、何を基準にして選ぶのかがポイントです。白いクラウン・インレーを考える際のヒントを紹介します。
費用
費用を最重視する場合は、健康保険が適用される素材を選ぶと良いでしょう。その中でも、見た目が気になる人はコンポジットレジンが歯の色に近いためおすすめです。ただし、歯ぎしりの癖がある人や噛む力が強い人はコンポジットレジンでの治療が適さない可能性もあるため、医師と相談してみましょう。
審美性
審美性を重視する場合は、豊富な色数から選べる自由診療の素材なら望む美しさが見つかるでしょう。自由診療の素材の中にもさまざまな種類があるため、医師と相談しながら、自分の希望や治療部位に合った素材を選ぶことが大切です。
虫歯のリスク
歯は治療をしても、治療に使われた素材によっては二次虫歯になりやすく、特にクラウンの下にできた虫歯は自覚症状に乏しいため、発見が遅れることで抜歯のリスクも高まります。自由診療の素材は高額になるものの、銀歯やコンポジットレジンと比べて二次虫歯のリスクを抑えやすく、歯を守ることにつながります。
歯ぎしり・食いしばりがある
歯ぎしりや食いしばりなどがある場合、噛み合わせが強い場合などは、その力に耐えられる素材を選ぶのが適切です。自由診療となりますが、人工ダイヤモンドとも呼ばれる「ジルコニア」は強度が高く、奥歯に適しています。
ジルコニアは、オールセラミックよりも透明度が劣るといわれる素材ですが、近年は美しさを追求した「オールセラミックジルコニア」も登場しています。オールセラミックジルコニアは、ジルコニアのフレームにオールセラミックを被せたもので、ジルコニアの硬さとオールセラミックの自然な見た目を併せ持つことが特徴です。
金属アレルギー
CAD/CAM冠・CAD/CAMインレーが保険適用になった理由の一つに金属アレルギーがあります。虫歯治療の白い素材は、審美性だけでなく金属アレルギーのような身体的な問題の解決策として検討することができます。金属アレルギーが心配な方は、金属を一切使用していないセラミック素材がおすすめです。
まとめ
セラミック治療は美しい歯にできるだけでなく、二次虫歯リスクを低減できるメリットもあります。しかし、単に「セラミック」といっても、種類によって特徴は異なります。ハイブリッドセラミックは一部条件付きで保険適用となりますが、プラスチックを含むため経年劣化や変色のリスクがあります。
納得できる治療を受けるためには、保険診療か自由診療かといった点だけでなく、歯の寿命・変形や変色・二次虫歯リスクなど、さまざまな面を考えたうえで検討することが大切です。
静岡のセラミック治療歯科・小嶋デンタルクリニックでは、長く快適に使用できる歯の治療として、また再治療の可能性を減らす投資として、「オールセラミック(e-max)」や「オールセラミックジルコニア」でのセラミック治療をおすすめしています。「あとは定期検診を受けていれば安心」と思えるセラミック治療になるよう、小嶋デンタルクリニックがお手伝いいたします。